【 名君としての素質 】
- さて,孫亮伝を書いているのに,当の孫亮が全く出てこないという異常事態^^;が続きましたが,やっと孫亮本人の登場です。257年になると孫亮も15才となり,いよいよ政治の表舞台に出てきます。では孫亮はどういう人物だったのか?結論から言うと,さすがに孫権が溺愛しただけの事はあり,かなりの能力を秘めていたと考えられます。
- (注)孫亮伝に「257年4月、孫亮は正殿に出御し、大赦を行い、初めて自ら政治を執った」とある。これは、キングダムでも話題?の「加冠の儀」かw?つまり、呉においては、皇帝は15歳で成人である。ということは孫亮は4月生まれか。
- まず孫亮は,大赦を行って『これからは孫亮本人が政治を取り仕切るぞ。』という意志を表します。そして孫綝の上奏する意見に対して,反対・反論を行います。『孫綝の言いなりにはならないぞ』という訳です。孫亮は孫権の治世の頃の文献を調べ,『先帝(孫権)さまの頃は,先帝さま自身の考えで政治が行われていたのに,今では大将軍(孫綝)が政治を取り仕切り,私は文書に『可(いいですよ)』と書かせてもらっているだけじゃないか。』と,側近の者たちに漏らしています。孫亮は自身で政治を取り仕切る意志がありありだったのです。面白くないのは孫綝でしょう。しかし孫亮の覇気は留まる所がありません。次に皇帝直属の軍隊の創設を行います。孫亮は15才~18才の若者の兵士の中から選抜をして三千人の特別部隊を創設,日ごと宮廷内で演習を行います。普通,軍の演習は宮廷内でやったりしませんが,それには孫綝への牽制という意味があるでしょう。そもそも,孫峻・孫綝の専横が成立した背景には,宮中の近衛兵を孫峻が押さえていたためという事があります。孫亮直属の部隊が宮廷内部に入り込む事は,孫亮の宮廷内での権力の強化及び,孫綝指揮下の近衛兵への圧迫という事があったと考えて良いと思います。
- 孫亮が優秀であったことを示すエピソードに,『宦官が蜂蜜の中にネズミの糞を入れたか否か?』事件というのがあります^^;。孫亮は梅の実を蜂蜜につけて食べたくなったので,宦官に倉庫から蜂蜜を取ってこさせます。宦官は蜂蜜を倉庫から取ってきますが,その蜂蜜の中にはネズミの糞が入ってしました。宦官は『倉庫の役人がこれを渡した。』と言い,倉庫番の役人は『渡していない。それは宦官が用意したものだ。』と言います。双方の言い分が異なるので,裁判沙汰になるところでしたが,孫亮は,『そんな事はイチイチ裁判に掛けなくてもすぐに分かる。』と言い,蜂蜜の中に入っていたネズミの糞を二つに割ってみます。そして『もし,初めからこの糞が蜂蜜の中に入っていたのなら,糞は中まで湿っていたはずだ。しかし,この糞は中は乾いており,今になって中に入れられた物であることは間違いない。つまり宦官の言っている事がおかしい。』と推理,それを聞いた宦官は自分のやったことであると認めます。孫亮探偵の名推理炸裂です^^;。周りにいた者は孫亮の頭の良さに皆驚きます。
- この逸話には異聞もあります。孫亮は宦官に交州から献上された砂糖を持ってこさせますが,宦官は倉庫番の役人にかねてから恨みがあったので,砂糖の中にネズミの糞を入れて,『倉庫番の役人は職務をいい加減にやっている。』と上奏します。孫亮は倉庫番の役人を呼びつけますが,役人を詰問するのではなく,『この容器は蓋がある上に,さらに覆いがかけてあって,ネズミの糞が入るような物ではない。お前はなにか宦官に恨みを持たれているのではないか?』と尋ねます。役人は,『以前,その宦官が宮中で用いている敷物の横領を持ちかけましたが,宮中で使う敷物の数は決まっているので渡しませんでした。』と,横領を持ちかけられて拒否したことがあったと言います。そこで孫亮は宦官を詰問し,全てを白状させた上,宦官の髪を切り,鞭打ちの刑にして役目を免除します。裴松之は後者のエピソードの方がより事実に近いだろうとしていますが,いずれにせよ,孫亮が知恵者で,不正を許すような輩ではなかった事,覇気をもった青年であったことが伺えます。 ▲▼